医学論文の書き方とは?英文で書く際の注意点を解説
医学論文は、研究結果を共有する手段として重要な役割を担います。
海外専門ジャーナルに医学論文を投稿する場合、構成や内容に注意するだけでなく、文法や語彙など英語でミスしてないか確認することが大切です。
今回の記事では、医学論文を初めて書く方に向けて、医学論文の書き方を解説します。
この記事を読むことで、構成ごとの注意点を理解できるようになるので、ぜひ参考にしてみてください。
コラムの目次
医学論文とは
医学分野の論文には、「会議録」や「座談会」、「図説」など様々な種類があります。
中でも原著論文※に関しては、特定非営利活動法人の医学中央雑誌刊行によると、以下のような条件が掲げられています。
- 雑誌の目次や各論文の冒頭に「原著」「原著論文」との記載がある場合。
- 定義の後半に示した論文形式が満たされている場合。
※1983年~1995年に作成された論文に関しては、他の論文種類が指定されていないものを原著論文とする。
医学分野における論文の種類をまとめると、以下の通りです。
- 原著論文
- 会議録
- 図説
- 講義
- 解説
- 総説
- 一般
- 座談会
- Q&A
- レター
- 症例検討会
- コメント
それぞれの論文の種類ごとに細かく定義があるので、詳細は以下で確認してみてください。
参考:論文種類の定義
英文で書くこともある
医学論文は英文で書かなくてはいけないケースも少なくありません。
海外専門ジャーナルなどに論文を投稿する場合、英語で記述することが求められます。
医療界において、情報をアップデートしていくためにも、医学論文の重要性は高まっています。
せっかく研究した内容を論文として発表しなければ、医療の発展に貢献することができません。
そのため、英語があまり得意ではない方も、海外専門ジャーナルに自分の書いた論文を投稿するために、英文校正サービスや英文添削サービスを利用して、論文の完成を目指すことが大切です。
医学論文の書き方
「いざ医学論文を書き始めよう」と思っても、何から始めればいいか分からない方も多いのではないでしょうか。ここでは、医学論文の書き方をステップごとに紹介します。
医学論文の投稿先を決定する
まず、医学論文の投稿先を決定することが大切です。ジャーナルの編集方針に合わない医学論文を書き上げてしまうと、せっかく完成させた論文が掲載されない可能性があります。
論文のテーマや研究領域、これまでの掲載実績を参考にしながら、医学論文の投稿先を決めていきましょう。
なお、医学論文を投稿するジャーナルの「Instructions to authors(インストラクション・トゥー・アーサーズ:投稿規定)」を守る必要があります。規定に沿っていない内容だと、不採択となってしまうためです。
構成を決定する
医学論文の投稿先が決定したら、次は論文の構成を決めていきましょう。先述した通り、構成は「Instructions to authors」に準じたものを作成する必要があります。
複数のジャーナルに投稿する場合でも、それぞれの規定にあわせて適宜修正することが大切です。
さらに、構成を整えることは最低限のマナーであるため、マナーが守れていないと、編集側からの評価は下がってしまいます。そのため、「Instructions to authors」をしっかりと確認した上で、構成を組み立てましょう。
IMRDを意識することが大切
医学論文の構成を立てる際は、「IMRD」を意識するようにしましょう。
IMRDは、Introduction(イントロダクション:緒言)、Materials and Methods(マテリアル・アンド・メソッド:研究材料・方法)、Results(リザルト:結果)、Discussion(ディスカッション:考察)の頭文字を組み合わせた言葉です。
Introductionでは、論文を通して何を明らかにし、何が未解決か簡潔に述べます。
Materials and Methodsは参考にした文献や統計の方法などを記載するパートです。
Resultsにおいては、表やグラフなどを有効活用しながら、研究結果を説明します。
Discussionは、結果から考察したことを書くのが一般的です。
考察を記述する際は、Materials and MethodsやResultsと順番を揃えると、まとまりのある論文に仕上がります。
タイトルを慎重に決める
構成が完了したら、医学論文のタイトルを決定する必要があります。
タイトルは読者の興味・関心を左右する重要な要素なので、論文内容を体現するタイトルを慎重に選びましょう。
タイトルが文法的に間違っていたり、分かりづらい表記だったりすると、読者や編集側からの評価が下がる傾向にあります。
また、タイトルページには所属先や総文字数など、基本的な情報を分かりやすく表記してください。
投稿先のジャーナルに掲載されている論文を参考にするとよいでしょう。
Abstractを作成する
構成やタイトルが決定し論文が完成した後は、Abstract(アブストラクト:論文の趣旨)を作成しましょう。Abstractとは、論文に何が書いてあるか簡単にまとめたものです。
編集者はAbstractを読んで、ジャーナルに掲載するかどうか決定するため、Abstractは重要な役割を担います。
医学部・医学研究科教授等を務める下川宏明氏による
「医学論文の書き方:Circulation Journal 編集長からのアドバイス」
によると、約15%の論文は外部の査読者による査読に回さずに不採択とされていることが明らかになっています。
従って、論文に何が書いてあるか明確に伝わるようにAbstractを完成させることが大切です。
医学論文を書く際の注意点
ここでは、先ほど紹介した下川宏明氏のアーティクルを参考にしながら、医学論文を書く際の注意点を紹介します。
Introduction section
Introduction section(イントロダクション・セクション)は、医学論文の導入部分です。
これからどのような内容の論文を展開するか、読者に伝わるように分かりやすく記載する必要があります。
論文・研究を通して明らかになったことや、解決できなかったことを記載することが大切です。
この部分が疎かになっていると、読者は論文を限られた情報の中で読み進めていく必要が生じます。
Introduction sectionは数ページ使用するのではなく、1ページ以内に収まるように書くのがポイントです。
Methods section
医学領域では、近年倫理的側面が重視され始めています。
Methods section(メソッド・セクション)では、医学論文の倫理性を証明するためにも、委員会等の組織から許可を得ていることを記載することが重要です。
例えば、基礎的研究の場合、動物実験倫理委員会に承認を得る必要があります。
特に欧米のジャーナルでは、承認を得ているか重視される傾向にあるので、海外専門ジャーナルなどに論文を投稿する方は注意しましょう。
また、研究を進める上で使用した参考文献や論文を記載してください。
Results section
Results section(リザルト・セクション)は研究結果の詳細を記載する部分です。
研究内容や情報量に応じて、表やグラフを使用すると良いでしょう。
また、論文中で使用する表やグラフの線やフォントは同一のものを使用し、論文全体にまとまりが生まれるように工夫することが大切です。
医学論文をオンライン上のサイトに掲載する場合、カラーが使われることがあるので、効果的に色を加えるのもポイントといえるでしょう。
さらに、論文に挿入する表は横線のみを用いるのが鉄則です。
Discussion section
研究結果の考察は、Discussion section(ディスカッション・セッション)で記載します。
セクションの冒頭に、全体の考察を簡単にまとめて記載すると良いでしょう。
全体の考察をまとめた後、結果ごとの考察をそれぞれ記載していきます。
先述した通り、MethodsやResultsを記載した順番で考察を記載することが大切です。
また、Discussion sectionでは本研究で達成できなかった部分とその理由も説明します。医学論文の信頼性を保つためにも、しっかりと達成できなかった結果を伝えることが重要です。
References section
References section(リファレンス・セクション)は、先ほど紹介したInstructions to authorsに則って記載するようにしましょう。
論文の総文字数にReferences (参考文献)が含まれることが多いので、総文字数とのバランスを見ることが大切です。
また、参考文献が偏った出典元のものばかりだと、論文全体の評価を下げる可能性があります。加えて、分野の代表的な論文を参考にすることもポイントです。
まとめ
今回の記事では、医学論文をこれから書く方や、始めて医学論文に取り組む方に向けて、医学論文の書き方について解説しました。
医学論文は、原著論文や会議録、図説、講義、解説など様々な種類に分けられます。海外専門ジャーナルなどに医学論文を投稿する場合、英語で記載する必要があるので注意しましょう。
医学論文を書く際は、投稿先や構成、タイトル、Abstractを決定するところから始めます。
構成ごとに注意するべきポイントが異なることを覚えておきましょう。
例えば、Introduction sectionでは読者に伝わるように分かりやすく本文をまとめる必要があります。
医学論文を完成させる上で、英語に自信がない方は英文校正や添削サービスを利用することをおすすめします。
医学論文に特化したサービスを展開している企業もあるので、依頼先を見極めることが大切です。