翻訳トライアルとは?受験の流れや勉強法を紹介します

公開日:2021.06.07
最終更新日:2023.08.09

プロの翻訳家として活動していくためには、語学力は当然のこと、その語学力が通用するかどうかを試す「翻訳トライアル」を受けて合格する必要があります。いくら語学力に自信があっても、プロとして翻訳家活動をしていくのであれば、避けてはとおれない道です。では、具体的にどのような試験なのでしょうか。今回は、翻訳トライアルの概要と受験までの手順、勉強法や合格後の流れを説明します。

翻訳トライアルとは?

そもそも「翻訳トライアル」とは何なのでしょうか。端的に説明すれば、翻訳会社が独自に行っている採用試験のようなものです。公的な資格ではないため、出題される問題の量も難易度もまちまちで、対処法が見つけにくいものでもあります。

また、公的な資格ではないため、どこか1社の翻訳トライアルに合格したからと言って、別の会社にも即採用されるわけではありません。翻訳会社も多くの種類があり、翻訳家に求める英語力もそれぞれ違います。そのため、統一のテストを設けるのではなく、各翻訳会社で独自に決められた試験を、個々にクリアする必要があるのです。

主なエンドクライアントは貿易会社やメーカー、大学をはじめとするシンクタンクなどが中心です。翻訳会社は、翻訳トライアルに合格した在宅翻訳家に、エンドクライアントから獲得した仕事を振り分けます。もちろん、日常会話ができる程度で合格できるようなものではないことは言うまでもないでしょう。場合によっては高い専門性が求められることも珍しくありません。

翻訳トライアルの手順

では、実際に翻訳トライアルを受けるまでの流れはどうなっているのでしょうか。実は特に難しいことはなく、試験を開催している翻訳会社に応募すればいつでも翻訳トライアルを受けることができるのです。

では、合否判定までの具体的な手順を見ていきましょう。

 翻訳会社のトライアルに申し込みする

まずは翻訳会社の求人を探し、応募するところからスタートです。求人は翻訳に関する専門の求人誌以外にも、ネットで検索しても出てきます。求人を探すためだけに雑誌を購入する必要はないので、ネットでの検索をおすすめします。

応募の際には履歴書・職歴職務経歴書と翻訳経験を記入し、手順に沿って情報を送信すれば完了です。この時、履歴書と職務経歴書は丁寧に書きましょう。

いかに語学力が求められているとはいえ、翻訳会社からすれば立派な採用試験です。あなたがどんな人で、どういう経験をし、そしてそれが翻訳にどう生きるのかをしっかり書き込むようにしましょう。

トライアル課題に取り組む

書類選考を通過したら、翻訳会社からおられてくる課題に取り組みましょう。実質こちらのほうが重要で、指定された期間内に課題を翻訳する必要があります。課題はメールに添付されてくるので、見逃さないようにしましょう。

問題内容は翻訳会社によって違いますが、それほど多くないのが普通です。中には翻訳以外にも、文法問題を出題してくるところもあるので注意が必要です。提出期限はおおよそ1~2週間で、完了後にメールで翻訳会社に提出します。期間内であればいくらでも見直しは可能なので、ケアレスミスがないようにしましょう。

完成した課題を翻訳会社に送る

完成した課題はメールに添付し、翻訳会社に提出しましょう。合否結果は翻訳会社によって違いますが、おおむね1か月以内に来ると思っておきましょう。中には合格ではなく「仮合格」と通知してくれることもあります。

合格後は契約書類の手続きをし、同時に翻訳単価交渉をして翻訳会社に登録をすれば完了です。なお、1か月以内に通知は来るものの、中には連絡が遅くなる翻訳会社もあります。課題提出から概ね2週間を目安に、連絡がなければこちらからメールを送ってみましょう。

 

翻訳トライアルの難易度は?

翻訳トライアルに挑戦しようと思っている人は、語学力に自信のある人でしょう。しかし、気になるには翻訳会社が提示してくる課題の難易度です。公的な資格ではないため、過去問を探すのに一苦労している人もいます。本項では、翻訳トライアルの難易度やテキストなどについて紹介します。

課題は本案件より難しめ

結論から言えば、翻訳トライアルの課題は実際に受ける案件よりも難しいことが多いです。これは翻訳会社によって異なりますが、ひっかけ問題があったり、文法問題が含まれていたりと幅広い問題に対応する力が求められています。翻訳会社のクライアントを見ればわかりますが、並みの語学力では到底太刀打ちできません。

また、その難しさから、受けた翻訳会社のトライアルすべてで不合格になってしまう人もいます。ただの勉強不足のようにも見えますが、これには翻訳トライアル特有の問題があるのです。

過去問やテキストはない

翻訳トライアルは、その難しさから、受験した人が自信を喪失してしまうことも珍しくありません。その最大の理由は、過去問やテキストが公開されていないことにあります。過去問やテキストがないということは、出題の傾向が一切わからないということです。これでは何をどう対策すればいいかわかりません。

さらに、実際に合格して本案件を受けてみればわかりますが、課題のほうが難しい印象を受ける人も少なくありません。それだけ翻訳会社が求めている語学力が高いということを、前提知識として持っておきましょう。

合格率は会社それぞれ

難しいと言い続けてきましたが、実際の合格率はどうなのでしょうか。これは翻訳会社によって異なりますが、5~10%が普通と言われています。受験者が100人いれば、そのうちの5~10人しか合格しないので、いかに難しい試験かがわかります。

しかし、これはあくまでも一般論であり、翻訳会社によって異なるのが現実です。翻訳会社の中には、登録できる翻訳者の数を増やしたいところもありますし、翻訳者が飽和していてなかなか合格を出さないところもあります。合格率に関してはそれほど重要ではないので、考えすぎなくてもいいでしょう。

翻訳トライアルにむけた勉強法

翻訳トライアルは過去問やテキストがないため、勉強方法がわからないと前述しました。しかし、対策がまったくできないわけではありません。実際の試験の問題とは違いますが、これから紹介する3つの方法で勉強すれば、合格率は高くなるでしょう。

実務経験を積む

「実践に勝る経験はない」と言われますが、翻訳トライアルでも同じことが言えます。実際に論文や貿易に関する文章を自分で翻訳してみるといいでしょう。

特に狙っている言語を使う国とやり取りのある会社やシンクタンクで働くだけでも専門用語を吸収できる機会が増えます。

また、論文などにも目をとおすことで、新たな表現や言い回し、聞いたことのない単語に出会えるので十分収穫になります。

翻訳セミナーや講座を受講

翻訳の専門誌で紹介されているような翻訳セミナーや、オンラインでの翻訳講座に参加するのも有効な勉強方法です。翻訳セミナーや講座で教鞭を執る翻訳家は、もちろん翻訳のプロとして数多くの翻訳をこなしてきています。

そんな人たちに教えてもらったほうが、近道になることもあるでしょう。費用はかかりますが、過去問やテキストの費用がかからないことを思えば十分払う価値はあるでしょう。

対訳のある記事で練習

対訳のある記事を、自分で翻訳した後に見てみるのも有効な勉強方法です。取り上げるものは論文でも新聞記事でも構いません。語学力を磨くには、実際に自分で翻訳してみることが有効な手段です。その過程で出会った新しい表現や単語は逐一ストックしていき、自分の武器を増やしていきましょう。

 

翻訳トライアル合格後も仕事は舞い込まない

翻訳トライアルに合格すれば、晴れて翻訳家としての第一歩を踏み出せるわけです。しかし、翻訳トライアルに合格したからと言って、すぐに仕事がもらえるわけではありません。

理由は、先に登録している翻訳家のほうが信頼度は高いからです。翻訳トライアルで相当優秀な結果を出せば話は別ですが、仕事が途切れずもらえるようになるまでには時間がかかると思っておいたほうがいいでしょう。それまでは、別の翻訳会社の翻訳トライアルを受けて、仕事の取り込み口を増やしておくことをおすすめします。

 

まとめ

翻訳トライアルの概要や受験までの流れ、合格するための勉強法や合格後の仕事を受けるまでについて説明しました。プロの翻訳家の定義は難しいものの、合格すれば自慢の語学力を生かした活躍が望めることでしょう。しかし、翻訳家になるまでの道のりは、決して平たんではありません。本記事で紹介した勉強法を実践し、少しでも早く翻訳トライアルに合格できるように、日々精進しましょう。

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