英文をスムーズに読むための訳し方や練習法

公開日:2022.09.14

英文読解と言えば以前は「精読」が主流でした。
ただ、英文をスラスラ読んだりスムーズに訳したりするには、英文読解に必要な英語の基礎知識を習得していることに加えて、英文を素早く読むスキルを身に付けることも必要です。

以下では、「精読」やそのメリット・デメリットについてご説明した後、英文読解にはどのような基礎知識が必要となるのか、英文を素早く読むのに役立つスキルとその練習方法をご紹介します。

「精読」スキルだけでは英文をスピーディに読めない

英文を読む際の英文の訳し方と言えば、以前は「精読」して丁寧に訳していくことが主流でした。
読む英文の量が少ない時はそれでもいいのですが、大量の英文を読む時は「精読」のスキルだけではスピーディに読めません。

学校英語では「精読」が主流だった

以前の学校の英文読解の授業では、英文を「返り読み」して「精読」し丁寧に「英文和訳」しながら読んでいくことがメインでした。

新出単語は辞書ですべて調べ、きれいな日本語に訳すために以下のように係り受けを示す矢印などをメモした経験がある方も多いのではないでしょうか。

例文)I went to the library (where I met my friend).

上の例文では、修飾部分(ここでは関係副詞節)を括弧で囲み、そこから被修飾語(library)に向けて矢印を書きこんでいます。

このような「精読」スキルは、英語を学習し始めて文の構造を習っている時や、翻訳(和訳)するために英文を読む時などは非常に役に立ちます。ただし、「精読」にはメリットだけでなくデメリットもあります。

「精読」のメリットとデメリット

「精読」のメリットは、
・細部まで正しく解釈するスキルが身に付く
・辞書を引きながら読むことで語彙増強につながる
ことなどが挙げられます。特に英語学習者にとっては、精読することは英語力向上に大きなメリットがあります。

一方「精読」のデメリットは、
 ・時間がかかる
 ・細部にこだわりすぎるとかえって大意を把握しづらい
などが挙げられます。

そこで、英文をスムーズに読むためには「精読」による訳し方だけでなく、他のスキルも必要になってきます。

以下では、まず英文読解するのに必須の基礎知識をご説明した後、スムーズな英文読解に効果的な訳し方のコツをご紹介します。

英文読解に必要な基礎知識

英文を訳すのに必ずしも「精読」しなくていいとはいっても、前提として最低限抑えておきたい基礎知識はあります。以下で、特に重要な4つのポイントをご説明します。
・文型・品詞
・関係代名詞・関係副詞
・接続詞・つなぎ言葉(副詞)
・語彙力

文型・品詞

文型を知っていると、英文の大まかな枠組みを把握しやすくなります。
まずは主語(S)と動詞(V)を見つけ、次に以下の5文型のいずれに当たるのかを判断します。

【5文型と例文】

5文型 例文
SV I ran.(私は走った。)
SVO (S ≠ O) I threw a ball.(私はボールを投げた。)
SVC (S = C) I was happy.(私は幸せだった。)
SVOO (O ≠ O) I gave him a hat.(私は彼に帽子をあげた。)
SVOC (O = C) She made me happy.(彼女は私を幸せにした。)

(S = 主語, V = 動詞, C = 補語, O = 目的語)

なお、文の主な要素(S = 主語, V = 動詞, C = 補語, O = 目的語)に当てはまらないものは、すべて修飾語(M)です。

I ran happily. (私は幸せに走った。)→ SV文型で”happily”は修飾語(M)

SVOとSVC、SVOOとSVOCをそれぞれ見分けるには、
・SVOのS ≠ O、SVCのS = C
・SVOOのO ≠ O、SVOCのO = C
という特徴を利用します。

たとえば以下の文のように、文型を見分けることができます。
I threw a ball.
(”I ≠ ball”なのでSVO文型)
I was happy.
(”I = happy”なのでSVC文型)
I gave him a hat.
(”him ≠ hat”なのでSVOO文型)
She made me happy.
(”me = happy”なのでSVOC文型)

文型を見抜けたら、英文の訳し方は簡単になります。
She rendered me happy.
たとえば上の例で、SVOCではO = Cなので、動詞”render”の意味を知らなくても、「主語(S)の行動によりO = Cになった」とざっくりと訳すことができます。

例文では、「彼女が私を幸せに__。」なので”render”は “made”と同じように「した」というような意味なんだろうと推測できます)

英文読解のためだけでなく、きちんとした「英文和訳」が必要される時は、動詞の意味もきっちり辞書で調べて正確に訳す必要がありますが、英文の大意を把握するだけなら上記の方法でも大体の意味が取れます。

次に、「品詞」も大事です。
「品詞」によって、文の要素(S,V,O,C,M)の内いずれになり得るか決まっているためです。

たとえば、主な品詞として以下の4つをご説明します。
・名詞・・・主語(S)または目的語(O)
・動詞・・・動詞(V)
・形容詞・・・補語(C)または名詞を修飾する修飾語(M)
・副詞・・・常に修飾語(M)(主に動詞、形容詞、副詞を修飾する)

個々の単語の品詞が何なのかは単語の接頭語などにより分かることもありますが(happiness・・・名詞、happily・・・副詞)、区別がつかないこともあります(hard・・・形容詞または副詞)。

そういう時は逆に文型や前後の意味から品詞を考えます。また、たいていの辞書には品詞が載っています。

関係代名詞・関係副詞

関係代名詞や関係副詞に続く節はいずれも「形容詞節」であり、直前の名詞(「先行詞」)を修飾します。
つまり、常に名詞を修飾する修飾語(M)として働くので、「先行詞」を詳しく説明している部分だと認識しておくとよいでしょう。

例文1)
I went to the library which is located in the city center.

例文2)
I went to the library where they have a lot of books.

例文1の関係代名詞節と例文2の関係副詞節は、いずれも直前の名詞”library”を修飾しています。
もし下線部の意味が取れなくても、「私は図書館へ行った。」と文の主な部分は訳せたことになり、素早く大意を把握できます。

また下線部の意味が分かれば、「私は(シティセンターにある/たくさんの本がある)図書館へ行った。」とすべて訳せます。

接続詞・つなぎ言葉(副詞)

英文でよく使われる接続詞やつなぎ言葉(副詞)を知っていると、文と文のつながりや英文の論旨の流れをつかみやすくなります。

たとえば、「順接」を表す接続詞には”because”、副詞には”therefore”があります。
また「逆説」を表す接続詞には”although”、副詞には”however”があります。これらの接続詞・副詞を知っていれば、

A because B.= B. Therefore, A
は「BなのでA(順接)」という意味で、

A although B. = B. However, A
は「BだけどA(逆説)」という文の流れを把握できます。

語彙力

後述するように、英文をスピーディに読むには一字一句辞書で調べないで読んでいくスキルも必要ですが、基本的な語彙力は必須です。
もし英文の中の大部分の語句の意味を知らなかったら、大意を把握することさえ難しいでしょう。

市販の単語集などを利用して基本語句をマスターすると同時に、「類義語・対義語」、「接頭語・接尾語」などにも着目すると語彙力を効率的にアップできます。

類義語・対義語

新しい単語を習う時は、既に知っている類義語や対義語と結び付けて覚えると記憶に残りやすくなります。たとえば”surmise”(推測する)という言葉を覚えたい時、既に知っている類義語”guess”や“estimate”などとセットで覚えたり、”increase”(増加する)を対義語の”decrease”(減少する)と併せて覚えたりすることで効果的に覚えられます。

接頭語・接尾語

接頭語・接尾語を覚えておくと、初めて見る単語でも意味を推測しやすくなります。

たとえば、”disagree”(意義を唱える)という単語を始めて見たとします。”agree”(同意する)という単語と「反対」を意味する接頭語”dis-“を知っていれば、”disagree”は「同意する」の反対「異議を唱える」を意味すると予測できます。

また、”-ment”が「動詞」を「名詞」に変える接尾語だと知っていれば、”judgement”(判断)は”judge”(判断する)の名詞形だなと分かるので、新たに単語を覚える手間が省けます。

英文読解に効果的な英文の訳し方のコツと練習方法

ここまで英文読解に必要な基礎知識についてお話ししてきました。
以下では、英文をスムーズに読むのに役立つ「英文の訳し方のコツ」とその練習方法をご紹介します。

英文の訳し方のコツ

以下で英文の訳し方のコツを3つご紹介します。

まずは大意をつかむ

最初から一語一句訳そうとすると、かえって全体像が見えにくくなります。
ある文の意味が抽象的過ぎて分からなくても、そのまま読み進めていくとより詳細な説明や具体例が書かれていて意味が理解できることがあります。

少しくらい分からない部分があってもそこで止まらず、読み進めてみましょう。

スラッシュリーディング

英文を素早く読むためには、「精読」により「返り読み」をするよりも、英文の順番どおりに読む「スラッシュリーディング」の方が適しています。

「スラッシュリーディング」とは、意味のまとまりごとに区切って英文の順番通りに意味を取る読み方です。

I went / to the library / which is located in the city center.
(私は行った / 図書館に / (その図書館は)シティセンターにある)

上のように、スラッシュごとに意味を把握し訳していくので、返り読みしない分スピードアップできます。

毎回辞書を引かない

英文に知らない単語が出てくるたびに毎回辞書を引いていると、非常に時間がかかります。
知らない単語は前後の内容から意味を推測するのがコツです。

それでも意味が分からない、気になる単語には印をつけておき、切りが良いところまで一通り読み終えた後、辞書で引いて意味を確認すると良いでしょう。

英文読解の練習方法

大量の英文を読むことを通じて英文を読むのに慣れることは、英文読解のスピードを上げるのに欠かせません。

その際ただやみくもに読むのではなく、上述した「訳し方のコツ」を念頭に置きながら読む練習をするのがお勧めです。

読む英文は、自分の興味関心がある分野や仕事に関係する分野など、継続して読めるものを選びましょう。
同じ分野の英文をある程度の量読んでいくことで、その分野によく出る語彙に慣れ、基本的な背景知識も習得でき、英文を読むのがより速くなります。

また、「リスニング」も「スラッシュリーディング」の練習に役立ちます。
リスニングで英文を聞いている時は、英文を読む時のように「返り読み」する時間はありません。

否応なく英文の順番通りに理解していくしかないので、「スラッシュリーディング」の訓練になるのです。

英文を「音読」することも英文をスムーズに読むことに役立ちます。
声に出して読むことで自分の声を「リスニング」することもでき、目・耳・口を総動員して英文構造に慣れることができます。

英文読解に役立つその他のスキル

さらに英文を素早く読むコツとして、「パラグラフリーディング」という読み方があります。
これは、一文ずつ順に読んでいくのではなく、パラグラフごとの要旨をつかんでいく読み方です。

英文はパラグラフごとに「トピックセンテンス」(多くの場合パラグラフの最初の文)があります。

「トピックセンテンス」はパラグラフの要旨を表す文なので、この「トピックセンテンス」だけを読んでいけば、その英文全体の要旨を素早くつかむことができます。

まとめ

英文を正確に日本語に翻訳するには、従来から行われてきた「精読」は便利なスキルです。
ただ、英文を素早く読んで訳すコツは、読んでいる途中で辞書を引かず、「スラッシュリーディング」や「パラグラフリーディング」のスキルを取り入れることです。

これらのスキルを練習して大量の英文を読むのに慣れてきたら、最終的には頭の中で日本語に訳さなくても英文の意味を取れるようにするのが理想です。

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